何かを受け取った時の表現

お店で商品を受け取った時、あるいは、誰かからプレゼントをいただいた時など、何かを受け取った時、「ありがとう」と感謝を伝える人は多いと思います。ベトナム語では Cảm ơn (カム オン。Cám ơnでも同じ) といいますが、単に Cảm ơn だけではなく、相手の人称代名詞を付けていうと、丁寧度、親しみ度がアップしますので、できるだけ

Cảm ơn + 相手の人称代名詞

と言うといいと思います。例えば、相手が年下なら、Cảm ơn em、相手が年上の男性なら Cảm ơn anh、年上の女性なら Cảm ơn chị というようにです。詳しくは人称代名詞のページも見てください。

ところで、ハノイなどベトナム北部では感謝を言葉にして出す人は非常に少ないように感じます。何かを受け取るときにも「ありがとう」という人はあまり見かけません。ただ、もう一つ別の表現があります。それは、xin(スィン)という言葉です。具体的には、

自分の人称代名詞 + xin

となります。相手が年下で、自分が男性なら Anh xin、自分が女性なら Chị xin、相手が年上なら自分の性別に関係なく Em xin、と言うといいと思います。訳すと、「いただきます」という意味ですが、そこまで堅苦しくありません。そして、この表現には相手に対する感謝が含まれています。

Xinの発音ですが、「スィン」と書きました。「シン」とするとほかの言葉になるからです。「スィ」は、英語の see の「スィ」と同じ音です。

次に誰かから何かを受け取った時、ぜひ試してみてください。

ベトナム語の発音は難しい! だけじゃない

ベトナム語を使ってベトナム人と話してみると、すぐにベトナム語の発音が難しいことに気づきます。なぜなら、自分が話すベトナム語が相手に通じないからです。簡単な単語一つでさえ通じません。

それで、ベトナム語の発音は難しい!となります。そして、それを聞くベトナム人は、特にベトナム語を教える先生たちは、「ベトナム語の発音は難しいですよ!」と外国人の学生に伝えます。(Youtubeでベトナム語を勉強できるビデオをアップしている日本語流暢なベトナム人の先生たちもみんな口々に、そして少しうれしそうに?そう言います)

こうして、生徒は「ベトナム語の発音は難しい!」という意識がますます強くなり、そしてほとんどの場合、それが苦手意識となります。

より正確には、ベトナム語を話すときに、発音は極めて重要! なのに、発音がとても難しい!

確かに、ベトナム語の発音は日本人にとって難しいです。でも、ベトナム語の発音は難しい!と聞くと、わたしは少しだけ違和感を感じます。というのは、そのフレーズだけだと、とても大切な考えが抜け落ちかねないからです。

その大切な考えというのは、「ベトナム語を話すときに、発音は極めて重要!」というものです。重要なのに難しい。ここがポイントだと思っています。

というのは、ベトナム語を学習している人の中には、ベトナム語の発音があまりに難しいため、発音の練習を手を抜いたり、少しぐらい間違っても通じるだろうと考えてあまり真面目に取り組まなかったりする人がいるからです。

そうした方たちは、もちろんベトナム語の発音が難しいことを知っているのですが、それがどれだけ重要なのかを理解していないのかもしれません。特に、日本に住んでいるベトナム人との仕事、交流のためにベトナム語を学ぼうとする場合、困れば日本語に切り替えるということが可能なので(特に相手のベトナム人の日本語が自分のベトナム語より上手な場合)、発音が難しい → じゃあ、いいや~ となってしまうことがあるのです。

たとえば、ベトナム語にはaが三つあります。a、â、ăです。この使い分けは非常に大切で、間違えても通じる時もありますが、まったく通じない時も少なくありません。でも、発音は難しいことはわかっていても、重要だということを認識していないと、「まあみんなaだから、何とかなるだろう~」という発想になり、どのaも同じにしてしまいます。結果、まったく通じません。

かくいう私がかつてはそういう考えでしたが、ベトナムで仕事をする機会が増え、日本語はおろか、外国語さえほとんど話すことが無いベトナム人と話す機会が増えるにつれ、発音の重要さを身に染みて知るようになりました。

ベトナム人からベトナム語を教わっている場合、あるいは、話しているベトナム人がとても親切な方で、こちらの発音を直してくれようとする場合、間違った発音は大変な悲劇を招くことがあります。そう、できるまで、それが100回でも200回でも(さすがに大げさですが)言い直させられるのです。特に、相手がこちらの発音が間違っていることだけを認識していて、何が間違っているか、どのようにすれば直せるかを教えてくれない場合、千本ノックのような厳しい状況に遭遇する可能性が大です。

恐怖の言い直し千本ノック

そうすると、ますます「ベトナム語の発音は難しい」ということが強調されてしまうのですが、その前段にある「ベトナム語の発音は極めて重要なのに」という大切な考えが抜け落ちてしまい、結果、ますます手を抜いてしまう、そして通じない時は「ベトナム語の発音は難しいなあ」と苦笑いしてごまかすことになりかねません。

ベトナム語を勉強する時には、発音が極めて重要で、しかも発音が難しい、という二つを忘れないことが大事です。

人称代名詞(7)ベトナム語での人称代名詞 その4 チ|ベトナム語の壁(文法)

前回勉強したアインは、自分より年上の男性に使う人称代名詞です。今回、勉強するのは、自分より年上の女性に使う人称代名詞です。

年上の女性には、チと呼びかけます。

とはいっても、アインと同様、誰でもチと呼べばいいわけでもありません。今回は、チの使い方を見ていきましょう。

(注意)ベトナム北部では「チ」と短く発音することが多いですが、南部の人は少し伸ばす感じで「チ-」と発音する人が多いように感じます。ここではすべて「チ」と表記します。

1. 例文

簡単な例文を見てみましょう。自分が、相手に話しかけます。
このとき、相手は、女性で、自分より年上です(この前提条件は大事です)。

相手:Chào chị! Chị khỏe không?
(チャオ チ! チ ホエ ホン?)

こんにちは! お元気ですか?

2. 発音

カタカナ読み通り「チ」で通じますが、最後に、気持ち程度口を横に引くと音がよりはっきりしていいと思います。chịという単語のiのアルファベットの下についている小さな点は、詰まった発音であることを示す声調記号です。ですから、本来はチッと発音するぐらいでもいいと思うのですが、実際にはそこまで詰めた音にしているわけではありません。また、南部ではむしろ少し伸ばし気味で「チー」というように聞こえます。

3. Chị(チ)の使用方法

Chị(チ)はどのように使用するのでしょうか?主に以下の4つのケースで使用します。

自分の実の姉のことを指す。また、実の姉を呼ぶときの人称代名詞及び敬称

自分より年上の女性に使う人称代名詞(ただし、厳密には自分より10から15歳程度年上まで)

自分より年上の女性を呼ぶ際に、その人の名前の前にchị(チ)を付けると、日本語で人を呼ぶときの「○○さん」の「さん」という敬称

④女性が、自分より年下の人と話す時(相手の性別は問いません)に「わたし」という意味で使用する人称代名詞

(1)は、chị(チ)の本来の使用法です。弟や妹が自分の実の姉に呼びかけるときにchị(チ)と呼びます。しかし、アインの時と同様、実際には(2)の用途で使われることがほとんどです。そのため、(1) のように、自分の実の姉であることをほかの人に紹介する時にはchị gái(チ ガー↗)もしくはchị ruột(チ オット)という表現を使って、より明確にします。

(2)の用途の場合、相手が女性で、自分より年上ならば、こちらが相手に「あなた」と呼びかけるときにchị(チ)を使います。一方、自分が女性で、相手が自分より年下ならば、相手がこちらに「あなた」と呼びかけるときにchị(チ)を使います。

例を見てみましょう。冒頭の例文と似ていますが、もう少し具体的な設定です。

わたしが、自分より10歳年上のトゥイーさん(女性)に話しかけます。

自分: Chào chị Thủy! Chị khỏe không?
自分:こんにちは、トゥイーさん! お元気ですか?

Chị khỏe không? と尋ねているときのchịは「あなた」という意味です((2)の使用法)。トゥイーさんはわたしより年上なので、わたしがトゥイーさんのことを呼ぶときにはchị(チ)を付けます。

Chào chị Thủy! のchịは、「さん」という意味で、(3)の使用法です。ベトナム語では、ほとんどの場合、名前の前に人称代名詞を付けます。日本語の「さん」、「君(くん)」、「ちゃん」といった役割です。名前だけを呼ぶこともありますが、同い年や、年上の人が年下の人を呼ぶときに限られると言えるでしょう。ただし、この場合でも双方が親しい間柄であるときだけのことが多いようです。

(4)の使用法は、自分のことを呼ぶときに使うケース、つまり「わたし」としての使い方です。あなたが女性で、話をしている相手が自分より年下であれば、あなたは自分のことを指す「わたし」という意味でchị(チ)を使います。また、あなたと話している相手が女性で、あなたより年上なのであれば、その女性は自分のことを指す「わたし」という意味でchị(チ)と呼びます。

例を見てみましょう。先ほどの会話の続きです。

自分: Chào chị Thủy! Chị khỏe không?
自分:こんにちは、トゥイーさん! お元気ですか?

Thủy: Chị khỏe.
トゥイーさん:はい、(わたしは)元気です。

トゥイーさんが「元気です」と答える時に言うchị(チ)は、「わたし」という意味です。混乱しがちですが、慣れるようにしましょう。

4. 使用上の注意

chị(チ)を使いこなすうえでの注意点をあげてみたいと思います。

見知らぬ人にもchị(チ)を使える。本来は「姉」という意味のchị(チ)ですが、実際には自分より年上の女性にも使う人称代名詞であり、見知らぬ人に声をかけるときにも使ってまったく問題ありません。ベトナム人に関していえば、見知らぬ人からchị(チ)と声をかけられて嫌がる人はほとんどいないでしょう。

アインの時と同様、自分との年齢差に注意を払う必要があります。ただし、多くのベトナム人の女性も、できるだけ若く見られたいという気持ちを持っていますから、適切な判断が必要です。例えば、明らかに自分の親と同年代あるいはそれより少し若いくらいの女性であれば、chị(チ)と呼ぶと、不敬な印象を与えてしまうので、chị(チ)と呼ばないほうがよいでしょう。でも、chị(チ)と呼ぶべきかなと迷うくらいの年齢差なら、chị(チ)と呼んだ方が喜ばれると思います。

○一方、年下の女性をchị(チ)と呼ぶのは、ある程度の例外を除いて好まれません。というのは、老けているとみなしているような印象を与えるからです。例外として考えられるのは、たとえばある夫婦がいて、ご主人はあなたより年上ですが、奥さんはあなたより年下の場合です。しかも、その夫婦とそれほど親しいというわけではないのであれば、ご主人はアイン、奥さんはchị(チ)と呼んで構いません。

○上にも書いたように、chị(チ)の適用範囲は自分より10から15歳程度年上までが一般的ですが、少し広めに幅を持たせても大丈夫でしょう。ただし、これは自分と相手との関係にもよります。

○会社など、ある一つのグループに所属する仲間同士の場合、15歳以上年が離れていてもchị(チ)と呼ぶことは十分あり得ます。その場合には「年上の同士」という感覚でしょう。

アインと同様、自分と相手がそれぞれ何歳ぐらいなのか、ということも関係します。たとえば、トゥイーさんとチャーさんとわたしの三人がいたとします。全員、女性です。この三人の年齢は次の通りです。

トゥイーさん 48歳
わたし 30歳
チャーさん 12歳

わたしとトゥイーさん、わたしとチャーさんはそれぞれ18歳違います。では、質問です。

わたしはトゥイーさんをchị(チ)と呼んでも大丈夫でしょうか?

答え:問題ありません。人によっては「おばさん」を意味するcô(コー)を使う人もいるでしょう。でも、お互いに大人同士なので、わたしがトゥイーさんをchị(チ)と呼ぶのは問題ないと考える人は多いでしょう。

では、チャーさんはわたしのことをchị(チ)と呼ぶのでしょうか

答え:呼びません。ほぼ間違いなく、「おばさん」を意味するコーを使うでしょう。確かに年齢差は18歳で、わたしとトゥイーさんの関係を考えればよさそうに見えますが、わたしが大人であるのに対し、チャーさんはまだ未成年、しかも子どもと言える年齢です。子どもが大人にchị(チ)と呼びかけることはまずありません。なぜなら、ベトナム語では、適切な敬意を示しておらず、大変失礼なことになるからです。同じ未成年でも高校生くらいで、かなり大人に近くなってくると18歳年上の人にchị(チ)と呼ぶのもありかもしれません。

相手に対する敬意の意味で、年下の女性をchị(チ)と呼ぶこともあるが、必要ということではない。

日本では年下の人を呼ぶときに、親しい間柄であれば「くん」や「ちゃん」を使うことがあります。一方、社会人同士や見知らぬ人であれば、相手に対する敬意や、相手との距離感を出すために、年下の人を呼ぶときにも「さん」付けする人も多いと思います。

ベトナム人でもそのような意味でchị(チ)を使う人がいます。ただし、必要とはされていないようです。特にある程度親しい関係なのに、いつまでもchị(チ)と呼ぶのは少ないようです。年下の女性と話す時、最初の数回ぐらいは相手をchị(チ)と呼んでもいいかもしれませんが、普通は相手が耐えられなくなって、「わたしはあなたより年下なので、chị(チ)ではありません」と、言ってくると思います。

もちろん、ある程度フォーマルな場などでは、chị(チ)と呼ぶこともあるでしょう。

5. まとめ

○話している相手が女性で、自分より年上なら、「あなた」という意味で相手のことをchị(チ)と呼ぶ。
○自分が女性で、話している相手が自分より年下なら、「わたし」という意味で自分のことをchị(チ)と呼ぶ。(つまり、あなたが男性なら、この点は関係ありません。)

外国語の学習は高齢者の認知能力の維持にどれほど貢献するのか-ある論文から(1)

認知症。その予防についてさまざまな研究が進められていますね。

外国語の学習と認知症の予防に関係した研究に関する論文を見つけたので、ご紹介します。

論文名:Maintaining Cognitive Functioning in Healthy Seniors with a Technology-Based Foreign Language Program: A Pilot Feasibility Study(科学的な外国語学習プログラムによる健康的な高齢者の認知能力の維持:実現性に関する試験的研究) *

執筆者:Caitlin Ware(パリ・ディドロ大学-パリ第7大学-)ほか7名

掲載誌:Frontiers in Aging Neuroscience Vol.9, 2017

リンク:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5331045/

Ware, Caitlin et al. “Maintaining Cognitive Functioning in Healthy Seniors with a Technology-Based Foreign Language Program: A Pilot Feasibility Study.” Frontiers in Aging Neuroscience 9 (2017): 42. PMC. Web. 4 Aug. 2017.

* 論文名の和訳は「まなぼうベトナム語!」による。

老化防止のために様々な方法で脳を刺激することが推奨されています。運動をすることもその一つですし、チェスとか将棋など、脳を使うゲームなどもよいとされています。さて、外国語を勉強する身としては、外国語学習は確かに脳をかなり使うなと感じます。わたしの周りには、老化防止のために外国語を勉強しているという方はあまり見かけませんが、きっと世の中にはたくさんそういう方がおられることと思います。

とはいえ、この論文で指摘されていることですが、高齢者が認知能力を維持することを目的として開発された外国語学習プログラムはないようです。ふむ、確かに。外国語の学習というのは、大抵の場合、外国語の習得が目的ですからね。一方、いくら脳の認知能力の維持のためと言っても、結果として外国語を習得できないのであれば、やる気が維持できないと思います。外国語を学習するうえで年齢がそれなりの意味を持つことはみなさん同意されると思います。

この研究では、高齢者が認知能力を維持するために外国語を学習するうえで、より高齢者にとって効果的な学習方法を検討することを目的としています。おもしろい!

もし高齢者にとって有効な学習方法があれば、高齢者でない人にとっても効果的な方法かもしれませんし、少なくとも、外国語を学習していくうえで何らかのヒントが得られるかもしれませんよね。

この研究の具体的な方法や結果については、次回にします。