人称代名詞(4)ベトナム語での人称代名詞 その1 概要|ベトナム語の壁(文法)
①いつでも、「わたし」は自分、「あなた」は相手
日本語では、話をしている人から見て、「わたし」はいつでも自分のこと、「あなた」は相手のことを意味します。でも、ベトナム語では違うんです!
では、ここで、いつもの例文を見てみましょう。
男:わたしは、あなたを愛しています。
女:わたしも、あなたを愛しています。
わかりやすいように、色付けしてみました。
青色は男、赤色は女を表しています。
つづいて、この例文をベトナム語にしてみましょう。
(後の回で説明するので、ここでは、それぞれの単語の意味については省略します)
男:Anh yêu em. (読み方:アイン イウ エム)
女:Em cũng yêu anh. (読み方:エム クン イウ アイン)
同じように、青色は男、赤色は女で色付けしてみます。
男:Anh yêu em.
女:Em cũng yêu anh.
あれ?なんか変ですね!違いに気が付きましたか?
日本語の例文では、男性も女性も、自分のことは「わたし」と呼び、相手のことは「あなた」と呼んでいます。
でもベトナム語の例文では、男性は、自分のことを「Anh」と呼び、相手のことは「Em」と呼んでいるのに対し、女性は、自分のことを「Em」と呼び、相手のことは「Anh」と呼んでいます。
ベトナム語の文法はこうなのです。
会話において、自分と相手との年齢や立場に応じて、その会話での一人一人の人称代名詞が固定されるのです。この感覚、なかなか難しいですよね。。。わたしも慣れるまでずいぶんと時間がかかりました。
男:Anh yêu em.
女:Em cũng yêu anh.
上のベトナム語の例文ですが、日本語では自分のことは「わたし」、相手のことは「あなた」なので、単純にAnhは「わたし」、emは「あなた」と考えてしまうと、
男:わたし(Anh)は、あなた(Em)を愛しています。
女:あなた(Em)も、わたし(Anh)を愛しています。
となって、文章の意味が成り立ちません。
そもそも「あなたも(は)わたしを愛しています」なんて、CHAGE&ASKAの、君はぼくを愛している~♩みたいで、とても傲慢な文章ですよね。。。
でも、ベトナム語ではこれが正解です。
②ベトナム語での人称代名詞は、自分と相手の「名前」のようなものと考えよう
では、最後に、この文法に慣れるための一つのヒントを送ります。
それは、ベトナム語での人称代名詞は、「名前」みたいなものだ、と考えてしまうことです。
これまでの例文では単に「男」と「女」としてきましたが、この二人の名前は「太郎」と「花子」だとします。では、少し日本語的にはおかしいですが、この二人が、自分たちの名前を使って、この文章を言ったとするとどうなるか見てみましょう。
太郎:太郎は、花子を愛しています。
花子:花子も、太郎を愛しています。
ちょっと自然ではなく、なにやら結婚式で誓いの言葉みたいになりましたが、でも文法としては問題ないし、理解できますよね。
ベトナム語にはうんざりするほどの人称代名詞があり、しかも文法も日本語とは違います。でも、イメージとしては、自分と相手との間でどの人称代名詞を使おうとも、それはその会話の中で常に「固定」であること、それはちょうど自分と相手の名前を使って会話するようなものだ、ということです。
すっかり混乱しましたか?
大丈夫、そのうち慣れますから!
では次回から、うんざりするほどたくさんある人称代名詞を一つずつ見ていき、どんな場面でどの人称代名詞を使うのか、勉強していきましょう。それに、発音にも注目し、ベトナム人に通じる発音を身に付けて行きたいと思います。