人称代名詞 (2) 英語での人称代名詞|ベトナム語の壁(文法)
ベトナム語での人称代名詞は、①人称代名詞の数がたくさんある(正直、うんざりするほど。。。)、②「自分」や「相手」を指す語が、話の内容や話をしている相手との関係で頻繁に変化する、という特徴があり、これがベトナム語を学ぶときの大きな壁になります。
ベトナム語のこれらの特徴を理解しやすくするため、あえて英語での人称代名詞を取り上げてみたいと思います(余計に複雑だ!という声が。。。)
英語では自分を指す時に"I"、相手(「あなた」)を指す時に"You"を使いますね。
例として簡単な会話文を用意しました。
男:I love you.
女:I love you too.
気の利いた翻訳がほしくなる例文ですが、文法の解説なのであえてバリバリの直訳をします。
男:わたし(I)は、あなた(You。相手の女性のこと)を愛しています。
女:わたし(I)も、あなた(You。相手の男性のこと)を愛しています。
ベトナム語との比較のため、冒頭で紹介したベトナム語の人称代名詞の二つの特徴に絞って、英語の人称代名詞の使い方を見てみましょう。
①いつでも、「わたし」は"I"、「あなた」は"You"
上の例文を見てください。男性が「わたしは」といった時も、女性が「わたしも」といった時も、"I"を使っています。英語では、いつでもどこでも、話をしている人が自分のことを呼ぶときは"I"といい、相手のことを呼ぶときは"You"を使います。仮にあなたが会社員だとして、自分の会社の社長と話す時も、自分の部下と話す時も(部下がいれば。。。)、あなたが自分のことを呼ぶときは"I"で、相手は社長であれば部下であれ"You"を使います。
ところが、ベトナム語ではそうならないのです!
どういうことなのか? それは今度あらためて説明します。
ここでは先に進んで、二番目の特徴を考えましょう。
②「わたし」は"I"だけ、「あなた」は"You"だけ
一番目のポイントと少し説明がかぶってしまいますが、内容は違います。
先に見たように、英語では、話をしている人が自分を指す時は"I"を使います。そして、自分を指す語は"I"だけ、です。もちろん、「わたしの」を意味する"my"や、「わたしに、わたしを」を意味する"me"という言葉もありますが、それでも基本的にこの三つだけです。
話をしている相手を指す時も"You"だけです。「あなたの」を意味する"your"もありますが、「あなたに、あなたを」を意味する言葉はやはり"you"なので、基本的に二つだけです。
しかもこれらの言葉は、文章の中で人称代名詞の使われ方や位置によって変わるだけなので、おおざっぱにいって、英語で自分を指す語は一種類、相手を指す語も一種類、といっても間違いではないと思います。
しかし、ベトナム語には人称代名詞がたくさんあって、話の中で自分を指す語は相手との関係で正しいものを選択しなければなりません。しかも相手を指す語も、相手の性別や年齢、自分と相手との関係を基に、いくつもある言葉の中から正しい一つを選択しなければならないのです。ややこしい!
これについても後でもう少し説明します。
今回は英語における人称代名詞の使われ方を、ベトナム語の二つの特徴と比較して考えてみました。
次は、日本語での人称代名詞の使われ方を見てみます。実は、日本語は、英語よりはベトナム語に近いことがわかりますよ!