ベトナム語でありがとう|あいさつ
過去二回で「こんにちは」の言い方を練習しました。
こんにちはが言えたら、次は・・・、ありがとう、ですよね!
ところが、ベトナム語として考えると、ありがとうは後回しにした方がいいんですよねえ。
というのは、発音が難しいんです。かなり。しかも、北部の人はあまり「ありがとう」を言いません。だから、こちらが言っても、慣れていないので伝わらないことが多いです。
その覚悟をしたうえで、「ありがとう」に挑戦しましょう。
1. 基本形は Cảm ơn +人称代名詞 です。
まず、Cảm ơn を前と後ろに分けて発音の練習をしましょう。
最初は Cảm です。
ここからは、鏡を見ながら練習をしたいので、鏡の前に立つか、あるいは手鏡を持ってきてください。スマフォの前面のカメラで自分の顔を見るのもいいかもしれませんね。
さて、日本語で「噛む」と発音してください。
次はゆっくりと か・む と発音してください。
「む」の時の口の形に注目しましょう。鏡の中の自分の口の形に注目してください。
「む」という時、一瞬、口が閉じて、そのあとうすく口が開きましたか?人によっては、その時多少口先がとがった形になっていると思います。
「む」という字をローマ字で表すと、mu。 m + u ですね。
m の時に口が閉じて、u の時に口が開いています。普段、「む」と発音するときにはこんなことを意識しませんが、ゆっくり・はっきり発音するとこうなります。
次が大事なポイントです。
Cảm を見てください。m はありますが、u はありませんね!
つ・ま・り、Cảm を発音するとき、最後に口が閉じたままになる必要があります!
Cảm はカタカナで表すと、「カム」となりますが、camu ではないことをしっかり意識してください。
ではもう一度「噛む」と言ってください。鏡の中の口が最後開いていることを確認してから、今度は「Cảm」を発音しましょう。「カム」と言いますが、最後は口を閉じたままにします。
さて、Cảm の a の上には、クエスチョンマークらしきものがあります。これはベトナム語の発音記号で、上から下ににょろっと下がる、という意味なのですが、今の時点ではあまり意識しなくてよいでしょう。むしろ、「カ」を強めに言い、「ム」を弱めに言ってください。これで十分です。
さあ、最後に口を閉じたままにすることを意識して練習しましょう。最初の「カ」を強めに、ハイッ!
「カム」
次は Cảm ơn の後半の「ơn」に移ります。
日本語で「恩に着るぜ」と言ってみましょう。女性で、こんな言い方はしない、という方はどうぞ「恩に着ます」でもいいです。
まず、「恩」と言う時の舌の位置を確認します。もう一度、「恩に着るぜ」(恩に着ます)と言ってみましょう。
「恩」の ん と 続く に のところで、皆さんの舌は口の中のどこにありましたか?
え?覚えていない?
では、下の位置を意識しながらもう一度言ってみましょう。
「恩に着るぜ」(恩に着ます)
わかりましたか?
そうです。みなさんの舌の先の方が、上の歯の付け根と歯茎(裏側)にくっついていたのが分かると思います。
ここはとても大事なポイントです。
ベトナム語の単語で n で終わる単語は、必ず、舌の先を上の歯の付け根と歯茎(裏側)につけなければいけません。
では、下の位置をもう一度確認しながら言ってみましょう。
「恩に着るぜ」(恩に着ます)
ơn にはもう一つポイントがあります。それは ơ です。
ご覧のように、よく見かける o とは違います。o にひげみたいなものがついています。しかも片側。
ついているのがひげなのか、それとも波平さんのような髪なのかはわかりませんが、o とは違うから ơ があるんです。
では、何が違うのか?簡単に言うと、口の開け方です。
今度は鏡を使います。ぜひ鏡なり、スマホなりを持ってきて、ご自分の口の形をご覧ください。
そして、われらのホームラン王、「王貞治」(おうさだはる)と言ってください。
「王」と呼ぶときの口の形に注目しましょう。
すこし口を尖らす感じで、しかも開いた口の形はわりと丸いと思います。
では、ここから ơ の口の形に変化させましょう。
まず、とがった口から力を抜きます。口は閉じないでください。ただ、口をとがらせている筋肉の力を抜くだけです。すると、あまり人に見せたくない、ちょっとぼーっとした感じの口になりますね?
そのまま、つまり、口はその形で開けたまま、そーっと上の歯と下の歯を合わせてください。カチッと。
口の形に注意してください!口はぼーっと開けたままですよ!
そして、次に、一度閉じた上の歯と下の歯をそーっと開けてください。どれぐらいか?
それは、ちょうど板ガムを差し込んだ形ぐらいです。板ガムが上の奥歯と舌の奥歯に挟まっているぐらいです。
もう一度確認しましょう。
口はぼーっとした形で開いています。これを忘れた人は、もう一度「王」と言って、そのあと、とがった口から脱力してください。それがぼーっとした形で開いている状況です。
そして、上の奥歯と舌の奥歯を、板ガム一枚分くらいの隙間まで近づけます。一度きちんと合わせてから、また浮かせるというのもよいでしょう。
その状況で、「オー」と言ってください。決して「王」と口をとがらせて言うのではありませんよ。
口をぼーっと開き、板ガムを奥歯に挟んだ意識で、「オー」と言います。
これが ơ の音です。
もう嫌になってきたのではないですか?
だからいいましたよね。「ありがとう」はベトナム語的には後回しにした方がいいって。
でもここまで来たから、最後まで頑張りましょう。
ơn の音の注意点です。
〇口はぽっーとした形
〇奥歯を板ガム一枚分くらい開ける
〇その状態で「オ」といった後、「ン」を言うが、最後に、舌の先が上の歯と歯茎(裏側)にあたったままにする。
それで「恩」と言ってみましょう。間違いなく、日本語の「恩」とは違いますよね~。でも、それでいいんです。
だって、ơn ですから。
ただ、一つ覚えておいてください。実は、ơn は漢字の「恩」から来ているんですよ!
では、Cảm ơn を練習しましょう。
これまで勉強したことをすべて合わせます。
まず Cảm については、
〇「カム」というが、「ム」と言ったとき、口を閉じたままにする。
そして ơn については、
〇口はぽっーとした形
〇奥歯を板ガム一枚分くらい開ける
〇その状態で「オ」といった後、「ン」を言うが、最後に、舌の先が上の歯と歯茎(裏側)にあたったままにする。
この二つを合わせると Cảm ơn となります。
こんな小難しいこといいよ~、ただ カムオーン と言えばいいんじゃないの~?
と思ったあなた、残念ながら、それでは通じないと思います。外国人に慣れている、観光客相手の人やホテルのスタッフはわかるかもしれませんが、一般の方には難しいと思います。ですから、ぜひ、上に書いた練習をしてみてください。
最後に、またまた人称代名詞です。
ベトナム語では Cảm ơn + 人称代名詞とします。
こんにちは(その2)で説明しましたが、もう一度繰り返します。
- Anh(アイン):自分より1歳から15歳程度年上の男性
- Chị(チ):自分より1歳から15歳程度年上の女性
- Em(エム):自分より1歳から15歳程度年下の男性、女性
- Cháu(チャウ)自分より15歳から20歳あるいはそれ以上年下の男性、女性(発音:「チャ」を弱めに、「ウ」を強めに、かつ語尾を上げる)
- Co(コー)自分より15歳から25歳程度年上の女性
- Chú(チュウ)自分より15歳から25歳程度年上の男性(発音:「チュ」を弱めに、「ウ」を強めに、かつ語尾を上げる)
- Bác(バック)自分より25歳あるいはそれ以上年上の男性、女性(発音:「バッ」を強めに、「ク」は非常に弱く、かつ語尾を上げる)
つまり、自分より少し年上の男性に感謝を伝えるときは、
Cảm ơn anh.
と言います。年上の人が年下に言うならまだしも、年下が年上の人に「Cảm ơn」とだけ言うと、失礼な印象を与えるので、人称代名詞を正しく使いましょう。
いやはや、ずいぶんと長い記事になってしまいました。
みなさま、どうもありがとうございました!
今度は、「さようなら」を練習しましょう~。